とある論文を読んでいたらこんな菌名を目にしました。
“S. lugdunensis”
恥ずかしながら、、、見たことがない!!しかも病原性が高そうだ、知らなくていいのか私!
というわけで調べてみました。
“S. lugdunensis”ってなんなのさ
- S. lugdunensisはcoagulase-negative staphylococci (以下CNS)であるがS. aureusと同様の病原性を持つ。黄色ブドウ球菌と同様に血液培養から1セットのみの発育でも真の菌血症として対応することが多い。
- S. aureus以外のStaphylococcus属をCNSまでしか同定していない施設では、S. lugdunensisが見逃されている可能性がある。
- 他のCNSと異なり、メチシリン感受性であることが多い。
グラム陽性球菌の分類
さて、これから感染症を学ぶぞ!という方にはS. aureusって何?CNSって何?グラム陽性球菌って何?といった方もいるでしょう。そんな方のために簡単な導入を。

初めて菌について勉強しますという方向けの大まか解説なのでわかる方は読み飛ばしてください。
グラム陽性球菌(gram-positive cocci)はGPCと呼ばれ、その中でブドウ球菌(ブドウの房のように塊状になる菌、cluster)と連鎖球菌(一列に連鎖状に並ぶ菌、chain)に大別されます。
ブドウ球菌に着目し、コアグラーゼ陽性のものがS. aureus、コアグラーゼ陰性のものがCNSと称されます。
コアグラーゼってなんぞや?はい、凝固酵素のことで、ヒトの血漿の凝固を起こすものです。危ないやつ(病原性が高い)といった認識でいいと思います。
で、その危ないやつ(S. aureus)はペニシリン系が効く菌と効かない菌があり、MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)とMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に大別されています。
ちなみに前者はセファゾリン等、後者はバンコマイシン等を使います。抗MRSA薬はさすがに薬学生でもご存じですよね。
S. lugdunensis
で、今回焦点を当ててるのはその他のブドウ球菌、CNSです。CNSはcoagulase-negative staphylococci とその名の通りコアグラーゼが陰性なので危なくないやつの総称!という風に認識していました。
が、S. lugdunensisはコアグラーゼ陰性菌ですが、臨床的にはS. aureusと同様の病態を引き起こすそうです。S. lugdunensisが同定された場合には、通常はコンタミネーションではなく真の起炎菌として扱うべきとされています。黄色ブドウ球菌と同じですね。他のCNSはコンタミネーションと判断され治療対象とされないことも多いです。
S. aureus以外のStaphylococcus属を”CNS”とまでしか同定していない施設では、S. lugdunensisが見逃されている可能性があるとか。自身の病院がどうなっているのか(外部委託している病院もあるとは思いますが、、、)確認してみてはいかがでしょうか。(私の病院は菌種まで同定されていました。)
メチシリン感受性株も他のCNSと比べ高いです。(地域差あり)
まとめ
S. lugdunensisはCNSですがS. aureusと同様の病原性を持つ危ないやつだよという話でした。メチシリン感受性株も多く、病原性及び抗菌薬選択において他のCNSとは区別して考える必要があるのですね。
読んでいた論文は下記です。超簡素にまとめた記事も書いているので良ければご覧ください。
The New England Journal of Medicine
Antibiotic Treatment for 7 versus 14 Days in Patients with Bloodstream Infections Just a moment...
ではまた👋
参考文献
Fadel HJ, Patel R, Vetter EA, Baddour LM. Clinical Significance of a Single Staphylococcus lugdunensis-Positive Blood Culture. J Clin Microbiol. 2011 Apr;49(4):1697–9.
Herchline TE, Barnishan J, Ayers LW, Fass RJ. Penicillinase production and in vitro susceptibilities of Staphylococcus lugdunensis. Antimicrob Agents Chemother. 1990 Dec;34(12):2434–5.
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